-半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)-


半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の効能

半夏厚朴湯は漢方では、代表的な精神安定剤です。体力中等度で、気分がふさぎこみ、精神的に不安定で、頭痛、めまい、動悸があり、胃腸虚弱で、腹部膨満感、食欲不振、嘔吐、喉から胸元かけて物がつかえている感じ、顔面や手足にむくみがあり、圧迫するとへこみが戻らないなどの症状がある人に用います。うつ病、不安神経症、神経性食道狭窄症、神経性咽頭症、ぜんそく、つわり、食欲不振、めまい、枯声など広く応用します。頻尿に加えて、気分がふさぎがちで、不安が強く、神経過敏ぎみの場合に有効です。


スポンサードリンク


半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の解説

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の「うつ病」に対する効果

漢方では、ノイローゼやうつ病は次のように解釈されています。人間の体は冬の寒い時期、「腎」が栄養を貯えます。そして春になるとその貯えた栄養を使って「肝」がいっせいに働きだします。現代では冬場に休息する習慣が無くなりましたので、栄養の蓄積も不十分になりがちです。

この肝は漢方でいう、「気」(き)や「血」(けつ)の流れを管理する臓器だと考えられています。私たちが、体の調子がいいと感じるのは気と血がうまくめぐっている証拠で、うまくめぐらなくなると、イライラしたり落ち込んだりうつになったりといった神経の病に傾いていきます。

もう一つの重要になるのは「心」(しん)の臓です。ここは脳の働きを管理すると漢方では考えますが、心が正常な人は物事をポジティブに考えることができるのでうつにはなりません。反対に心が弱っていると物事をネガティブに考えるようになり、ノイローゼやうつ病になるのです。

西洋医学では、こうした患者さんにトランキライザーなどの向神経薬を処方します。ところが、向神経薬というのはすべて体を冷やす作用があり、その結果、腎のエネルギーが一気に失われて落ち込んだ気分がますます落ち込むことになるのです。

気分が躁状態(そうじょうたい)なら向精神薬で一定の効果は期待できますが、うつの場合は逆効果になり、「死にたい」という気持ちを強くしかねません。これは漢方の「心肝気虚」(しんかんききょ)といわれる状態で、悲観傾向をますます助長してしまうのです。

病はいろいろな感情や不安によって引き起こされる、と漢方は考えるため、「気の医学」などともいわれますが、西洋医学では検査してもなかなか異常が見つからないために、最近では神経科の専門医も漢方の考え方を取り入れて治療することが多くなりました。

「半夏厚朴湯」(はんげこうぼくとう)の品質は厚朴で決まる

うつ病や気分が落ち込んでいる人の特徴は喉に詰まった感じがあるということ。西洋医学ではこれをヒステリー球、といいますが、向神経薬ではこれを取り除くことができません。また鎮静剤はあっても、麻薬でも使わない限り気分を高揚させる方法はないのです。でも、漢方薬には気持ちをよくする特効薬があります。

それが、「半夏厚朴湯」(はんげこうぼくとう)で、半夏(はんげ)(6g)、茯苓(ぶくりょう)(5g)、生姜(しょうきょう)(4g)、厚朴(こうぼく)(3g)、蘇葉(そよう)(2g)の5つの生薬が配合されています。

漢方では気の流れを大変重視しています。気は形がありませんが、人間の言動、思考などのすべてを統率しているものだと考えています。うつ病などは、この気が滞り、変調をきたした表れだととらえ、気の運行を円滑にして神経活動を正常にする働きのある薬を用います。

生薬としては順気剤と呼ばれるものを使いますが、厚朴や蘇葉がこれにあたります。

半夏厚朴湯はうつ病やノイローゼによく使われる処方で、先ほど述べた喉の詰まりという症状が選ぶ際の大きな目標ですが、ほかに動悸、めまい、精神不安、取り越し苦労などの症状も目安になります。厚朴が気分を明るくし、蘇葉が気のめぐりをよくするのですが、漢方薬の品質で問題になるのが前者の厚朴なのです。

厚朴という生薬には、実は中国産の唐厚朴(からこうぼく)と日本産の和厚朴(わこうぼく)の2種類があり、気に働きかける利気作用は唐厚朴のほうが断然優れているのです。

同じ厚朴でも両者は学名が異なるモクレン科の別の植物で、精油成分は唐厚朴のほうが断然多く、割ってみると断面に光り輝く結晶があることで見分けがつきます。精油成分が多いということは、当然においも強いのです。

価格は、唐厚朴が和厚朴の10倍しますから、同じ「半夏厚朴湯」の商品名で販売されていても、和厚朴を使ったもののほうが多いのは仕方ありません。漢方薬局で購入する際に一応薬剤師さんに確かめてみたほうがいいでしょう。さらにうつ症状が強い場合は、香蘇散(こうそさん)を等量、合わせて飲むとさらに効果があるでしょう。

うつ病の予防とがんの予防は同じ

ところで、こうしたうつ病の予防とがんの予防は根底が同じです。

「笑う」、「感謝する」、平熱が35度台の低体温の人は「体温を36度台に上げる」、この3つがうつ病とがんの予防の要(かなめ)になります。笑えば気分が明るくなると同時にがんと戦う免疫力が高まります。感謝の心は、気の持ち方が変わることにつながり、これも免疫力を高めます。35度台の低体温はがん細胞を最も増殖させやすいと同時に、腎のエネルギーも下げてしまいます。ですので、がんもうつ病も予防法は同じなのです。

適応される主な症状

配合生薬

配合生薬の効能

半夏(はんげ)

半夏には水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。特に胸腹部に突き上げるような膨満感があり、お腹がゴロゴロなる場合やのどの痛みがある場合に用います。

しかし、えぐみが強く、飲みにくくてかえって吐き気を催すこともあるので、単独で利用されることはまれで、漢方では吐き気をともなう胃腸障害や、つわりの適用処方などに広く配合される重要生薬の一つです。

鎮吐作用は、有効成分のアラビナンを主体とする多糖体成分によると考えられています。

茯苓(ぶくりょう)

茯苓には、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。漢方処方では利尿剤、利水剤、心悸亢進、胃内停水、浮腫、筋肉の痙攣などに茯苓を配合しています。

秩苓とは漢名で、植物名をマツホドと呼び、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核です。秩苓は菌核に多糖類のβパヒマンを、それにテルペノイドやエルゴステロールなどの成分を含んでいます。

最近の報告では多糖類のパヒマンから誘導されたパヒマランに、細胞性免疫賦活作用が認められています。サルノコシカケ科に共通の抗腫瘍作用とともに、今後の研究が期待されています。

茯苓は民間薬としては使われず、まれに利尿を目的に煎液を飲む程度です。漢方でも配合薬としては汎用されますが、単独では用いません。

厚朴(こうぼく)

厚朴には、抗菌作用、鎮痙作用、健胃作用などがあります。漢方として収斂(組織を引き締め作用)、利尿、去痰の目的に胸腹部膨満感、腹痛、咳などに使用されています。

厚朴にはアルカロイドのマグノクラリン、精油のマキロール、ホオノキオール、マグノロールなどが含まれています。

厚朴のマグノロールには大腸菌、黄色ブドウ球菌などの増殖を抑える働きが報告されています。またマグノロールとホオノキオールには中枢性筋弛緩作用が認められています。

蘇葉(そよう)

蘇葉は発汗、解熱、鎮咳、鎮静薬として風邪の治療によく利用されますが、この他に精油成分のペリルアルデヒドやメントールには鎮静作用、抗アレルギー作用、免疫活性作用などが認められています。

漢方では、風邪薬や鎮咳去痰薬とみなされる配剤に処方されています。

また精油成分には食欲増進作用や胃酸過多による潰瘍を抑制する作用がある他、抗菌作用があるので魚肉などの中毒予防に使われています。

生姜(しょうきょう)

生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。


スポンサードリンク


漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用


スポンサードリンク


女性・婦人科の治療ガイド

スポンサードリンク



女性・婦人科/健康

↑ ページトップ