-うつ病を客観的に診断できる「光トポグラフィー検査」(NIRS)-


うつ病を客観的に診断できる「光トポグラフィー検査」(NIRS)

客観的なうつ病検査

患者さんの症状や家族への聞き取りなど、医師の主観的な判断が診断の中心となる精神科医療に、客観的な検査を導入しようとの研究が進められています。

現在注目されているのが、群馬大精神科神経科准教授の福田正人さんらが取り組む光トポグラフィー検査(NIRS)です。

近赤外線を用いて大脳表面の血液量を計ります。統合失調症やうつ病では、何かを考える時の脳の血流量に特有の変化が表れる可能性があり、群馬大や国立精神・神経センター病院、東大病院など7施設で研究されています。


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「光トポグラフィー検査」(NIRS)による診断

群馬大では、患者さんら約400人が研究に協力しました。健康な人では、ものを考えると脳の前頭葉部分の血流が盛んになりますが、うつ病患者では変化が小さいことがわかりました。

うつ病と診断されていた40歳代の男性は、この検査を受けたところ、前頭葉の血流は健康な人並みに盛んという結果でした。この患者さんはその後、他の症状などとも考え合わせ、環境に適応できないために心身の不調が出る適応障害と、診断が見直されました。

また東大病院では、10歳代にうつ病と診断され、再発を繰り返した30歳代女性も、脳血液量の変化は健康な人に近かったです。一方、心理検査では、計算や暗記は得意なのに、状況の変化、前後関係の把握が苦手な傾向がわかりました。

この女性のうつ症状は、典型的なうつ病というより、苦手な業務のある職場で怒られた反応と考えられました。このため、診察に当たった精神神経科医師の滝沢龍さんは、抗うつ薬を減らすことを提案、「複数の業務が同時進行するといった、変化の激しい職場は避けた方がよいのでは」と助言しました。

しかし血流量の変化には個人差があり、差がはっきりしない場合もあります。そのため、この検査だけで、うつ病かどうかわかるわけではありません。あくまで診断の補助という位置づけです。

「うつ状態の診断補助」として、先端医療を保険外で併用できる国の先進医療に認められています。精神科分野では初の先進医療となります。

一方、統合失調症の患者さんでは、出された課題を考えている間の脳血流量の増加が小さいのに加え、課題が終わった後に血流量が増えるという特徴がわかりました。福田さんは「脳の血流量が盛んになるタイミングがずれており、脳が非効率な働き方になっている」と話しています。

統合失調症でも、うつ状態の診断補助のように、先進医療に認められるにはさらに研究を重ねる必要がありますが、「問診で統合失調症が疑われても、NIRSで違った特徴が出たら診断を見直すきっかけになります」と福田さんは話しています。

光トポグラフィーによる脳の血流検査

近赤外線を照射したり、脳からの反射を受信したりする帽子状の装置を頭にかぶり、問題が出される前、問題に答えている最中、テスト終了後の脳血流の変化を測定します。脳血流の変化の程度が、モニター画面に色の変化で示され、脳の部位によって脳血流が盛んになったかどうかわかります。


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