-前十字靱帯断裂の「靱帯再建手術」と「保存的修復法」-


前十字靱帯断裂の「靱帯再建手術」と「保存的修復法」

前十字靱帯の断裂

スポーツで膝を傷めることはよくありますが、中でも多いのが、膝をねじり、骨と骨をつなぐ太い靱帯(じんたい)を切ってしまう「前十字靱帯(ぜんじゅうじけん)断裂」です。そんな場合、別の部位から腱(けん)を取って靱帯の代わりに移植する「靱帯再建手術」をすれば、再び本格的なスポーツをすることも可能になります。一方、レクリエーション程度に軽いスポーツを楽しむ人で手術を望まない場合には、早期のリハビリで靱帯の修復を促す「保存的修復法」も試みられています。


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「靱帯再建手術」

膝関節は、太ももの大腿骨(だいたいこつ)と、すねの脛骨(けいこつ)が四本の靱帯で結ばれている。中でも中心的な役割をしているのが前十字靱帯で、これが切れてしまうと急に止まったりジヤンプしたりといった激しい動作ができなくなります。

元通りに運動できるようにするには、「靱帯再建手術」を行うのが一般的です。

手術は、皮膚を切開し、関節鏡と呼ばれる小型カメラを入れ、膝の内部を見ながら行います。大腿骨と脛骨に開けた穴に、膝の裏などにある腱を通して固定し、靱帯の代わりにします。数センチの傷口で済み、体に負担の少ない手術です。その後、半年から1,2年間のリハビリを行います。この手術で、競技に復帰したスポーツ選手も少なくありません。

「保存的修復法」

一方、「保存的修復法」は、手術はしないで運動療法によって靱帯を修復させる方法です。この治療をいち早く実施した、九州労災病院(北九州市)スポーツ整形外科部長の井原秀俊(いはらひでとし)さんは「切れた靱帯は元に戻らないとされてきましたが、早期に適切な運動をすると、再びつながることが経験的にわかりました」と語します。

膝が不自然な曲がり方をしないように、太ももからすねにかけて、装具でしっかり固定したうえ、屈伸運動や自転車こぎなどを行います。入浴時を除き、装具は寝ている間も着ける必要があり、3か月後に外して治療効果を判定します。

井原さんはこの10年余で約200人にこの治療を行い、成功率は7割でした。「膝を適切に動かすことで、靱帯が本来の形を取り戻すのではないか」と説明しています。切れた靱帯は放置しておくと縮むため、損傷後2週間以内に始めることが重要だといいます。

「靱帯再建手術」か「保存的修復法」の選択

「保存的修復法」には限界があり3割の人には効果がなく、再建を目指すなら改めて手術が必要となります。

また、修復した靱帯は、傷が治った後の「はん痕」のようなものと考えられており、元の靱帯と違って強度が劣り、1-2割の人で再断裂が起きるといいます。善衆会病院群馬スポーツ医学研究所(前橋市)所長の木村雅史(きむらまさし)さんは、スポーツ選手など本格的に運動する人(患者さんの5-6割)には手術を勧め、「歩行など日常生活で困らなければよい」という場合(患者さんの3割)は、手術せずにリハビリだけで様子を見ます。

保存的修復法を行うのは、残りの1-2割の患者さんです。「休日にテニスをするといったレクリエーション程度の運動を楽しむ人や、15歳以下の成長期など手術を避けたい場合の選択肢の一つ」と木村さんは話します。

装具を含めて、保険がききます。治療の対象や入院期問などは医療機関によって異なります。通院だけで治療する病院がある一方、1か月半と入院期間が長い病院もありますので、事前に問い合わせてください。

靱帯損傷の頻度や原因

木村雅史さんのまとめによりますと、外傷性の膝関節障害では靱帯損傷(90%)がほとんどで、うち前十字靱帯が全体の59%を占めます。その他の障害では、膝蓋骨(しつがいこつ)の脱臼(5%)、半月板単独損傷(2%)と続きます。

前十字靱帯損傷の原因を見ると、スポーツ外傷(73%)、交通事故(19%)、その他(8%)で、スポーツの中ではスキーが半分(34%)近くを占め、サッカー、バスケット、バレーボールと続きます。男女比は4対6と女性の方がやや多いいです。女性の場合は特に、他人とぶつかったわけではなく、単独で転んだケースが多いのも特徴です。

また、靱帯損傷の手術は、膝だけでなく、ひじのけがでも行われます。


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関連医療機関

九州労災病院(北九州市)スポーツ整形外科

善衆会病院群馬スポーツ医学研究所


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