-心の傷を癒す人工身体「エピテーゼ」-


心の傷を癒す人工身体「エピテーゼ」

見た目を回復する技術「エピテーゼ」

「エピテーゼ」とは、がんの手術や事故、先天的な障害で欠けた体の一部を、医療用シリコーンなどで作った人工身体のことです。医療用の接着剤や、骨に固定した磁石で欠けた部分に着け、見た目を回復する技術です。目、鼻、口、耳などのほか、指や乳房など、あらゆる部分を作ることができます。

義手や義足の多くが機能重視で、見た目は二の次だったのに比べ、エピテーゼは美しさや精密さを追求しているのが特徴です。しわやたるみ、まつげやまゆ毛、透ける静脈なども、本人の体の特徴に合わせて細かく再現し、色合いも周囲の皮膚と違和感なく仕上げます。

米国・UCLA付属病院で経験を積んだ歯科技工士、常国剛史さんが設立した「アヘッドラボラトリーズ」(東京都中央区)は、エピテーゼの製作会社の一つです。


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エピテーゼは心の傷を癒やす

欠けた部分はどんな特徴があったのか、本人や家族の意見を聞きながら、目の前で欠けた部分を復元する彫刻モデルを作製します。

モデルから作った鋳型にシリコーンを注入してエピテーゼを作り、色づけをします。5回程度通って、製作期間は約2か月です。遠隔地に住む人や入院などで通えない人のために、出張もします。

手術であらわになった粘膜を外気から保護したり、空気が漏れるのを防いで発音をはっきりさせたりなど、実用的なメリットもあります。

最も大きいのは患者さんの心に与える効果です。「今は着けていることを忘れることさえある。楽に生きられるようになった」とエピテーゼを体験した患者さんは話します。常国さんは「特に顔面の損傷は、周囲の驚く顔を見て引きこもりやうつになる人が多いいです。エピテーゼは心の傷を癒やします」と話しています。

エピテーゼは保険適用外

外科手術をした病院が、自前で作ったり、製作会社に紹介したりするほか、エピテーゼの専門外来を作った静岡県立静岡がんセンターなど、別の病院で外科手術を受けた患者さんを受け入れる施設も増えています。すでに皮膚などを移植している場合、エピテーゼを着けやすくする手術が必要な場合もあります。

問題は費用です。義手や義足と違い、保険がきかないため、目(義眼も含む)は40万~50万円、鼻や耳は30万円程度かかります。さらに、平均数年で傷んでしまうため、作り直すことも必要になります。長持ちさせるために毎日水洗いするなど、自身での手入れも欠かせません。

国立がん研究センター(東京都中央区)形成外科医の桜庭実さんは「社会復帰するまでが病気の治療で、エピテーゼも治療の一環になります。医療と認め、保険を適用すべきだと思います。今は、費用や出来上がりの写真などを十分に検討したうえで選択してほしいです」と話しています。


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関係医療機関・施設

国立がん研究センター(東京都中央区)形成外科

アヘッドラボラトリーズ

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