-がん治療前の不妊対策「ガラス化法」と「放射線遮断」-


がん治療前の不妊対策「ガラス化法」と「放射線遮断」

不妊対策「ガラス化法」

白血病や悪性リンパ腫などの血液のがんには、骨髄移植などの治療が行われます。その際、事前にがん細胞を退治するため、前処置として抗がん剤治療や全身の放射線照射を行います。その影響で卵巣や精巣の機能が失われ、不妊になることが多いです。

男性の場合、精子を事前に凍結保存する方法が普及してきましたが、女性の場合は卵子の採取や保存が難しく、これまで凍結保存はほとんど行われていませんでした。がんが治っても、「不妊」という後遺症に悩む女性も少なくありません。

未受精卵は受精卵に比べてもろく、低温になると細胞内の水分が氷の結晶構造を作るために膨張し、細胞が壊れやすいです。凍結しても、従来の方法では解凍後の卵子の生存率は約2割にすぎず、体外受精で出産に至る確率はわずか1%程度とされていました。

しかし、未受精卵を凍結保存する従来とは異なる新しい手法が開発され、注目されています。加藤レディスクリニック(東京・新宿)研究開発部長の桑山正成(くわやままさしげ)さんが開発した「ガラス化法」と呼ばれる凍結法です。これまで動物の卵子凍結に使われていましたが、1999年にヒトヘの応用に成功し、解凍後の未受精卵の生存率が98%へと飛躍的に高まりました。

「ガラス化法」は、細胞内の水分を毒性のない特別な溶液に徐々に置き換え、氷の結晶を作らないように凍結させます。この結晶がガラスと似たような構造を持つことからこの名がつきました。

同クリニックでは、ガラス化保存した未受精卵29個を体外受精させ、すでに5人の子供が生まれました。いずれも不妊患者への一時的な措置として凍結されたもので、まだ白血病患者のケースはありませんが、桑山さんは「他の不妊治療施設にもノウハウを伝え、全国の白血病患者の要望に応えていきたい」と話しています。


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放射線を遮断して卵巣機能を守る手法

しかし、「ガラス化法」ですと卵子の採取には、月経開始から約10日間、排卵を誘発する薬物治療を続ける必要があり、病状が急激に進行してしまった場合には実施が難しいです。凍結保存した場合でも、体外受精で妊娠に至る確率は一般に2-3割と高くありません。未受精卵の凍結保存で生まれた子供の健康に関する長期データもありませ。

そこで、がん患者には別の方法も試されています。骨髄移植の前処置の全身放射線治療の際、卵巣の部分だけを厚いタングステンで覆い、放射線を遮断して卵巣機能を守る手法です。

東大病院では、無菌治療部と放射線科が共同して、2002年からこれまでに3人の患者に実施、うち2人は治療後に月経が戻り、卵巣機能が回復しました。しかし、残りの1人は白血病が再発しました。再発が起きた部位は卵巣ではなく、卵巣に放射線照射をしなかったこととの因果関係は不明ですが、同部特任講師の神田善伸(かんだよしのぶ)さんは「十分に説明した上で慎重に進めたい」と話しています。

白血病専門医らで作る日本造血細胞移植学会は、治療後の不妊に対処するため、生殖医療の最新情報を患者に提供することになりました。

未受精卵の凍結保存を行う施設はまだ少なく、放射線の遮断も東大でしか実施されていません。

同学会前会長で岡山大教授の谷本光音(たにもとみつね)さんは「不妊対策について、治療前に主治医に相談してほしい」と話しています。

骨随移植の前処置と卵巣機能

抗がん剤のエンドキサンを使った場合の卵巣機能回復率は68%、エンドキサンとブスルファンの組み合わせでは2%、エンドキサンと放射線照射で15%という海外のデータがあります。移植後の妊娠を望むのでしたら、その可能性も含め、早めに主治医に相談してください。


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関係医療機関 

加藤レディスクリニック

東大病院


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